表題番号:2024C-531
日付:2025/03/24
研究課題東南アジアにおける越境人身取引市場の「法と経済学」分析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 土門 晃二 |
- 研究成果概要
- 本研究ではカンボジアでの人身取引の現地調査を実施し、ベトナム・中国での越境人身取引との対比を行った。実施期間は、2024年6月および12月のそれぞれ十日間である。6月の実施場所は、プノンペン郊外の農村地帯およびベトナム国境(モンドルキリ)周辺である。12月の実施場所は、プノンペンおよびシアヌークビル市内である。カンボジアでは、近年中国の関係した人身取引が問題になっている。それは強制結婚目的のもので、プノンペン近郊での事件が地元メディアでも取り上げられている。プノンペン周辺では日本や韓国への短期就労のために出国する例は多数あるが、人身取引被害については聞くことができなかった。しかし、ベトナム国境地帯では間接的ではあるが少数民族の人身取引被害の話しをきくことができた。現地NGOの報告書では、ベトナム経由で中国に連れて行く経路が報告されており、強制結婚の被害者が中国の隣国を越えて発生していることが伺える。プノンペン市内繁華街では売春が日常化しており、「バービア」がその中心である。また、市内には「置屋」も多く存在し、それらの場所ではかつては人身取引で売られてきた女性が働いていた。現在の状況を知るために、関係者と当事者に話しを聞いたが、幼女(ペドファイル:かつてよりかなり縮小していると思われる)以外、貧困が原因で自ら働いており、人身取引の被害者には会うことができなかった。越境人身取引についてベトナムと比較した場合、カンボジアの少数民族には、中国との関係で違いが存在することが分かった。ベトナム北部の中国との国境地帯では、多くの少数民族が中国の同一の少数民族と交流しており、そのことが強制結婚目的で騙されて中国に連れて行かれている背景にある。カンボジアの場合には、中国と国境を接していないことから、同一の少数民族であっても交流はなく被害が少ないことがわかった。