表題番号:2024C-521
日付:2025/11/05
研究課題日本におけるギグワーカーの挑戦とキャリアの持続可能性
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 鄭 有希 |
- 研究成果概要
本研究では、2023年4月~2024年3月までの期間において、日本におけるギグワーカーの挑戦とキャリアの持続可能性に焦点を当て、非組織的な労働形態に従事する個人が直面する課題および、それらを乗り越えるための資源について理論的・実証的に検討することを主な目的とした。特に、新卒一括採用や長期雇用を前提とする日本において、ギグワークという柔軟かつ不安定な働き方がどのように位置づけられ、どのような心理的・社会的影響をもたらしているのかを明らかにすることを目指した。
研究活動としては、(1)国内外の文献や統計資料を用いた理論的考察、(2)半構造化インタビューによる質的調査を通じた日本におけるギグワーカーのリアルな実態の把握、(3)資源保存理論およびJD-R資源理論に基づく全国調査の設計・実施と、それに基づく定量的分析を行った。
調査の結果、日本のギグワーカーは、収入の不安定性、社会的孤立、自己成長機会の不足といった課題に直面する一方で、柔軟な労働時間、自己裁量の高さ、ワークライフバランスの向上といった肯定的側面も享受していることが明らかとなった。また、特筆すべき課題として、日本特有の社会的スティグマ(social stigma)が確認された。たとえば、ギグワークに対する社会的理解や制度的整備が不十分であることから、信用評価が低く、住宅ローンの審査が通らない、クレジットカードが作れないといった経済的・社会的な不利益を被るケースが存在することが判明した。