表題番号:2024C-514 日付:2025/02/27
研究課題感興度の時系列変化に着目した観光ルート設計システムの構築と実践
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 講師 家入 祐也
研究成果概要
観光産業のデジタルトランスフォーメーション化に伴い,情報通信技術を活用した新しい観光設計が注目され始めている.新しい観光設計の一つとして,観光行動を劇場型体験としてとらえ,観光客の感興度の時系列変化を収集することによる観光体験設計が求められている.そして近年では,まち歩きを目的とする旅行者が増加傾向にあり,まち歩き観光は,観光地の新たな消費機会拡大を実現させる形態として期待されている.以上のような背景から,本研究では,観光客の感興度の時系列変化を示す指標の一つとして,皮膚電気活動(EDA)データに着目し,観光地の新たな消費機会拡大を実現させるためのまち歩き観光体験設計を試みた.熱海や小樽でのフィールド実験を通じて,EDAデータ,まち歩き観光客の位置情報データ,視線情報データ,会話情報データ,などを横断的に分析することで,まち歩き観光中の視線情報や会話情報が,まち歩き観光における消費行動のトリガーを特定しうることを明らかにした.さらに,EDAデータの上昇量に着目することによって,まち歩き観光における消費行動を抽出することの可能性を示すことができた.これは,まち歩き観光における消費行動という,屋外での消費活動を生理学的指標から抽出・予測することを試みた最初の取り組みであり,まち歩き観光だけでなく,商店街での買い回り行動など,多様な分野への応用も期待される.今後の課題としては,より多くのデータを収集し,EDAデータの上昇量と消費行動の間の関係性を解明することによって,EDAデータからまち歩き観光における消費行動の予測することが挙げられる.これによって,EDAデータを媒介とした,消費行動を促進するためのまち歩き観光地のシステムデザインが実現可能になる.また,多様なまち歩き観光地を対象としたフィールド実験を行うことで,本研究の一般性に関する議論も今後求められる.