表題番号:2024C-510 日付:2025/04/04
研究課題真空走行キャリアフォトダイオードの高速化設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 准教授 硴塚 孝明
研究成果概要
テラヘルツ光は無線応用およびセンシング応用として期待され、単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)を用いたフォトミキシングによるテラヘルツ光発生手法が注目されている。一方でUTC-PDは周波数帯域と感度のトレードオフによりRF出力が限界を迎えており、PDの更なる高出力化が求められる。本課題では、UTC-PDのキャリア走行層のキャリア輸送時間と素子容量の問題を解決するため、半導体に代わり真空領域をキャリア走行層に用いた真空走行キャリアフォトダイオード(VTC-PD)の高速化・高出力化設計を行った。負の電子親和力特性を有し、高効率なフォトカソードとして実績のあるp型InGaN吸収層を用いた垂直入射型VTC-PDを検討し、300 GHzにおける10 mW級のRF出力条件を数値解析により示した。また、電界印加による真空領域中の電子走行時間制御による周波数帯域の制御効果を確認し、複数電極構造によるテラヘルツ光の位相制御への適用可能性を検討した。一方で、InGaN構造VTC-PDはp型InGaNの電子移動度が帯域の制限要因となり、また紫外光による動作が必須となることから、電子の移動度に優れ、通信波長帯の単一モード光源によるフォトミキシングへの適用が容易であるInGaAsおよびGaAs吸収層を有するVTC-PD構造を数値シミュレーションにより検討し、導波路型PD構造の導入による吸収長増大による感度増大とRF出力増大効果の可能性を示した。本結果の実装により、300 GHzを超える高周波領域におけるテラヘルツ光の高出力化が期待される。