表題番号:2024C-503 日付:2025/02/04
研究課題農業・農村の脱炭素化と地域課題の同時解決
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院環境・エネルギー研究科 教授 野津 喬
研究成果概要

今年度は、農業の生産性向上と持続可能性の両立が可能な一石二鳥の取り組みとして近年,注目を集めている営農型太陽光発電を対象として、以下の研究を実施した。

本研究は観光農園で実施される営農型太陽光発電に対する消費者評価という切り口から,営農型太陽光発電の要素を分解した上で,その意義を検討した。分析の結果,消費者全体でみると,観光農園においては,スリット状の屋根による遮光による負担軽減効果という構造的な側面は評価されているが,農園経営者による太陽光発電の実施というエネルギー事業の側面は評価されていないことが示された。この結果によれば,消費者の体験価値向上の観点からは,単にスリット状の屋根さえ観光農園に設置すれば良いということになり,それが営農型太陽光発電である必然性はないということになる。その場合,実務家が指摘する,営農型太陽光発電が普及しない最も大きな理由としての,一般の消費者の営農型太陽光発電への認知度不足を解消することにはつながらない。

一方,本研究の分析結果からは,観光農園体験がある消費者や,営農型太陽光発電を知っている消費者,つまり環境に対する意識が高いと思われる消費者には,農園経営者による太陽光発電の実施というエネルギー事業の側面が評価されていることも示された。このことを踏まえると,エネルギー事業としての営農型太陽光発電の意義を消費者に伝えるためには,まずは環境に対する意識が高い消費者にアプローチし,その上で消費者全体へと理解を広げていくことが有効と考えられる。その意味で今後は,一般の消費者の理解を分析する観点から,スーパーマーケットに並ぶ農産物等に関する営農型太陽光発電の消費者評価などを分析することも必要と考えられる。