表題番号:2024C-498
日付:2025/04/04
研究課題サプライネットワークの汎用動的モデルの構築とシミュレーションによる検証
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 大学院創造理工学研究科 | 教授 | 鬼頭 朋見 |
- 研究成果概要
近年,グローバル化や需要の多様化,技術の目まぐるしい進化に伴い,サプライネットワークの構造が複雑化している.ネットワークの構造は機能に影響を与えるため,レジリエンスや効率性を定量的に把握し改善を図るうえで,サプライネットワークの構造を理解することは非常に重要である.昨今では,企業間のお金の流れを捉えた大規模データを用いて企業間取引ネットワークの構造を再現し,その特徴を分析する研究が盛んに行われている.これらの研究は,レジリエンスなどに関する有益な知見を提供している.
しかし,部品が徐々に組み上げられ最終製品を市場に出すまでの流れを捉えたサプライネットワーク(Product Supply Network: PSN)は,取引ネットワークとは異なる生成原理によってできていると考えられる. PSNの全体像を捉えるモデルを実現するためには,企業(売り手・買い手)の間の局所的な関係性構造を形成するメカニズムを特定し,それを反映した上で,それらの局所的構造が繋がり合って全体を形成するボトムアップ型のアプローチが必須である.
本研究では,まず部品ごとの売り手群・買い手群の間の取引関係構造(部品取引ネットワーク)をモデル化したうえで,それを重ね,繋ぎ合わせることでPSNの全体構造をボトムアップ的に構築する汎用モデリングを提案した.部品取引ネットワークのモデル化に際しては,部品の複雑性と企業の能力を考慮し,現実の制約や関係性形成原理を数理的にモデルに組み込んだ.これにより,製品・部品の売り手と買い手の間のダイナミクスを適切に反映した上で,複雑なPSN構造の全体およびその特徴を明らかにし,レジリエンスや効率性など重要な機能についての有益な知見を導出することが可能になると期待できる.