表題番号:2024C-492
日付:2025/03/28
研究課題ビオチンリンカー付加水酸化NADHの合成および単離精製
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 助手 | 高橋 弘大 |
- 研究成果概要
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は,生命において電子伝達体や酵素基質として働く重要な低分子化合物である。還元型NAD(NADH)は高温・酸性といったストレスや酵素副反応により水和され,電子伝達体としての機能を喪失した水酸化NADHへと変換される。先行研究において、水酸化NADHを再びNADHへと修復する酵素であるNAD(P)HX dehydratase(NAXD)の発現を抑制した脂肪前駆細胞では野生型と比べて水酸化NADHが蓄積し,分化が抑制されることが明らかとなっている。しかし,水酸化NADHの標的タンパク質および脂肪細胞分化抑制分子機構は未解明である。本研究課題では,水酸化NADHの標的タンパク質を同定することを目的とし,ビオチンリンカー付加水酸化NADHの合成および単離精製を目指した。具体的には、NHSエステルによるアミン反応性架橋剤化学を用いた。NADHはNHSエステルと反応性を示し,2つのアミノ基に対して同程度にビオチンリンカー付加が起きることをLC-MS/MSで確認した。さらに,ビオチンリンカー付加NADHを水酸化し,LC-MS/MSを用いて未反応のビオチン付加NADHと目的物質であるビオチンリンカー付加水酸化NADHの分離条件の検討を行った。両ビオチンリンカー付加化合物はニコチンアミドにおける水分子1つ分しか異ならないこと、ビオチンリンカーの疎水性がNADHと比べて高いことからLCでの分離は困難であると予想された。しかし、普遍的に用いられるODSカラムにアミノ基を修飾したカラムを用いて分離することに成功した。以上より,ビオチンリンカー付加水酸化NADHの合成および単離・精製方法を確立した。今後は、この化合物を用いて水酸化NADHの標的タンパク質の同定および脂肪細胞分化抑制分子機構の解明を目指す。