表題番号:2024C-486
日付:2025/04/03
研究課題量子二次元系においてスピン・軌道相互作用およびマルチサブバンド間相互作用が創出する幾何学的位相のBloch球解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 助教 | 東条 樹 |
- 研究成果概要
- 半導体2DQWに電場(Rashba外場)を印加すると、Rashba(R)-SOIとサブバンド間相互作用(ISI)を介して、価電子帯にはWeyl 様の特異点がnon-TRIM 位置に複数出現する。本研究課題ではSi 2DQW内重い正孔(HH)に注目し、このISIとR-SOIの協奏が生み出す位相幾何構造の特徴を検討した。位相幾何構造の算出にあたり、我々は系面直に微弱磁場を印加し、誘発されるサイクロトロン運動軌跡に沿ってBerry接続を周回積分した。HHの波動関数はR-SOIによりスピン分裂した二状態HH±の線形和で近似し(TS 近似)、この二基底HH±を両極としてBloch球上に表示した。これにより、二基底間の混成比および位相差の変化をそれぞれ天頂角θBと方位角ϕBを介して議論した。θBにはHH±間の交番的相互混成より三角波様変化が認められた。一方ϕBは波動関数がBloch球南極点近傍を通過する際、絶対値πを与える変化(πジャンプ構造)を呈しながらも、線形に変化した。我々は回転波(RW)近似を適用したrate方程式を介し(TSRW近似)、θB およびϕBの時間変化率がそれぞれ非可換・可換Berry接続を反映すること、加えて波動関数がBloch球極点近傍を通過する際にϕBのπジャンプ構造が必然的に生ずる事を見出した。一方、数値厳密解には、TSRW近似を超えたISIに基づく微細構造がθBおよびϕBに認められた。Bloch球表示の下では時間推進演算子は3つの回転ゲート積に分解されるが、さらにRW近似を用いると可換・非可換Berry接続とに対応する5つの単純な回転ゲートに分解されることを見出した。この論理ゲート分解により、等エネルギー面周回での波動関数の特徴的変化を解析することが可能となった。本内容に関連し、3報の論文発表、並びに6回(うち国際2回)の学会発表を行った。