表題番号:2024C-481 日付:2025/04/14
研究課題発酵味噌からの抗高血圧活性物質の探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 町田 光史
研究成果概要
高血圧は日本における代表的な生活習慣病であり、多くの人々が悩まされている。高血圧は心血管疾患のリスクを高め、健康寿命を脅かす要因のひとつとされている。したがって、日常的に高血圧の予防や悪化を防ぐ食品成分を摂取することが重要である。日本の伝統的な大豆発酵食品である醤油、味噌、納豆には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用があり、血圧上昇を抑制する効果があることが知られている。ACEはレニン-アンジオテンシン系において中心的な役割を果たす酵素であり、アンジオテンシンIを血管収縮作用の強いアンジオテンシンIIに変換し、血管拡張物質であるブラジキニンを不活化させることで血圧を上昇させる。
これまでに、大豆発酵食品に含まれるACE阻害ペプチドとして、ニコチアナミン、Ser-Trp、Phe-Phe-Tyr-Tyr、Ile-Ala-Valなどが報告されており、それらの半数阻害濃度(IC50)は1.9 μMから880 μMの範囲にある。
本研究では、新たな機能性食品成分の探索の一環として、味噌からACE阻害活性を持つ成分を探索した。ODSフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いた分画により、70%メタノールで溶出されたFr.15-5がACE阻害活性を示すことが明らかになった。一方で、これまで報告されている味噌由来のACE阻害ペプチドは、30%メタノールで溶出されていたことから、Fr.15-5は既知のペプチドとは極性が異なる成分を含むと考えられる。
この結果は、味噌に含まれるACE阻害成分が多様であり、これまで知られていなかった新規成分が存在する可能性を示唆している。今後、Fr.15-5に含まれる有効成分の構造解析が進めば、より高機能な高血圧予防食品の開発につながることが期待される。