表題番号:2024C-479 日付:2025/04/02
研究課題太陽熱を利用した大気中二酸化炭素の直接回収法(DAC)の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 古川 行夫
研究成果概要

大気中の二酸化炭素濃度は現在410 ppm程度と増加し,地球温暖化の主な原因と考えられている.大気中の二酸化炭素を直接回収するダイレクトエアキャプチャー(Direct Air Capture, DAC)は,すでに大気中に存在する二酸化炭素量を減らすことが可能であり,地球温暖化を解決する重要な方法である.大気中の二酸化炭素濃度が低いために,DACでは固体二酸化炭素回収剤が開発されているが,二酸化炭素回収に大きなエネルギーが必要なので運用コストが高く,回収エネルギーが小さな方法の開発が必須である.本研究では,太陽熱を利用して,二酸化炭素固体回収剤を加熱して二酸化炭素を回収する方法に関して研究した.パラボラ型反射鏡を有する太陽熱調理器を購入した.晴れの日に,水を用いてこの太陽熱ヒーターの出力を測定すると450 Wであった.すでに利用されている二酸化炭素固体吸収剤として,20 wt%のテトラエチレンペンタミン(TEPA)を含むモレキュラーシーブ13XMS 13X)を用いて太陽熱加熱放散の実験を行った.MS 13X170 ℃2 h,引き続き300 ℃3 h加熱したのちに,TEPAのメタノール溶液にいれて攪拌し,70 ℃3 h乾燥させて溶媒のメタノールをとばして,固体回収剤を調整した.この回収剤を真空下110 ℃2 h脱気後に,大気下で2 h放置して二酸化炭素を吸収させた.吸収した二酸化炭素量は重量法で求めた.太陽熱による加熱で温度を120 ℃にして1 h加熱し,吸収した二酸化炭素を放散させて,放散した二酸化炭素量を重量法で求めた.このサイクルを2回おこない,回収率は93%90%であった.再生可能エネルギーである太陽熱により二酸化炭素放散が可能であることを示した.太陽熱の利用により大幅なコスト低減が可能であり,DACへの利用が期待される.