表題番号:2024C-476 日付:2025/04/14
研究課題Rashba型電子状態をもつ(Pb, Bi)原子層合金の構造解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 准教授 高山 あかり
(連携研究者) 早稲田大学 修士1年 孝橋麟太郎
研究成果概要
(Bi, Pb)原子層化合物はGe(111)表面上にさまざまな表面超構造を形成することが報告されており、それらがRashba分裂した電子状態を示すことも予測されている。Mihalyukらは、2×2相と2√3×2√3相が形成されることを実験的に示した一方で、Quin らは、この系では√3×√3相も安定化する可能性があることを理論的に予測している。これらの試料については、均一な試料の作製には至っておらず、これは回折技術を用いた構造解析の大きな障害となっていた。本研究では、均一な試料の作製条件を確立し、その原子構造を明らかにすることを目的として、反射高速電子線回折(RHEED)による評価と全反射高速陽電子回折(TRHEPD)測定による構造解析を行った。試料は、Ge(111)清浄表面にBiとPb原子を堆積させ、その後、放射加熱によりアニール処理を行った。まず、Pb/Ge(111)-√3×√3-β構造を作製し、その上に1MLのBi原子を堆積させた。その後、423 Kでのアニーリングにより、5×5相と2×2相の出現を観測した。さらにアニール温度を473 Kまで上昇させると、2×2スポットのみがはっきりと観測された。また、573 Kのアニールでは、√3×√3相が観測された。これらの試料についてTRHEPD測定を行い、一連のTRHEPDパターンから(00)スポット回折強度の角度依存性(ロッキング曲線)を得、先行研究の構造モデルから計算したロッキング曲線と比較した。その結果、2×2相の構造は実験結果を再現せず、このことは提案された構造モデルは実際の構造とは異なることを示している。また√3×√3相はBi/Ge(111)構造であることがわかった。2x2相について、現在提案されたモデルからの最適化およびBiとPbの構造比率を変えたモデルの検討を行っている。