表題番号:2024C-474 日付:2025/02/10
研究課題重力波による一般相対論とその拡張理論の検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 辻川 信二
(連携研究者) 京都大学基礎物理学研究所 准教授 Antonio De Felice
研究成果概要
 宇宙に存在する暗黒物質の性質を重力波によって検証するために,アキシオンという擬スカラー場が光子と結合している場合に,ブラックホールの物理に与える影響を調べた.特に,ブラックホールの準固有振動という物理量を定量的に計算し,アキシオン暗黒物質の性質をブラックホール連星系合体後の重力波の観測から探ることを可能とした.さらに,スカラー場がガウス・ボンネ項と呼ばれる曲率項と結合している系で,ブラックホールの摂動に対する安定性を詳細に調べた.それによって,ブラックホールが安定に存在できるパラメータ領域が明らかにされ,強重力場中での重力理論の検証のための重要な示唆を与えた.これらの研究に加えて,ベクトル場が重力と非自明な結合を持つアインシュタイン・エーテル理論,および一般化されたプロカ理論におけるブラックホールの安定性の解析を行った.特に,ベクトル毛を持つ解のいくつかが棄却されることを新たに示し,重力波の観測からブラックホール解の選別を行う上で重要な寄与を与えた.
 上記の研究に加えて,原始ブラックホールの種を生成するような単一場のインフレーション模型において,スカラー場の摂動による1ループ補正が,宇宙背景輻射のような大スケールの曲率揺らぎに与える影響を調べた.特に,経路積分を用いた系統的な解析を行い,1ループ補正が大スケールの揺らぎのスペクトルに与える影響は小さく抑制されることを示した.本研究によって,小スケールの線形揺らぎが単一場インフレーション中に成長しても,それが宇宙背景輻射の温度揺らぎに影響しないことが明らかにされ,原始ブラックホールの研究の上で,重要な成果をもたらした.
 上記の研究成果は,8編の学術論文として執筆するだけでなく,2つの国外の研究会においても口頭発表として報告し,特定課題による研究成果の幅広い周知を行なった.