表題番号:2024C-469 日付:2025/04/04
研究課題CO2 固定のための炭酸塩水溶液を用いた電解による尿素直接合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 准教授 花田 信子
(連携研究者) 先進理工学研究科 修士課程1年 渡邊 陸
研究成果概要

カーボンニュートラル社会の実現に向けてカーボンリサイクルが注目されており、CO2電解還元法は電力に対する応答が早いことから変動の激しい再生可能エネルギーと相性の良いプロセスとして期待されている。その中で、肥料や樹脂の原料である尿素を水溶液中で窒素とCO2の反応により電解合成する手法が報告されている。先行研究では電解槽内で作用極に窒素とCO2をバブリングして合成しているが、CO2の水に対する溶解度が低いためCO2の転化率を向上させることが難しい。そこで塩基性水溶液でCO2を吸収して炭酸塩水溶液と窒素ガスから尿素を合成する手法を考案した。炭酸水素カリウム水溶液(KHCO3) 窒素ガスをバブリングしながら電解することで尿素の生成を確認できた。従来の触媒はホウ酸ニッケル(Ni3(BO3)2)が報告されているが、触媒合成法は水熱合成であるためその手法は複雑であった。そこで、ホウ酸処理したNi電極を用いて電解し、その電解特性や尿素の生成効率を評価した。研磨のみを行ったNi板電極を用いた場合では尿素が検出されず、ホウ酸処理したNi電極は尿素が検出されたことから、Ni表面にホウ酸ニッケルが形成されたと考えられる。尿素生成量は負電位の増加と共に増加したが、ファラデー効率は減少した。−0.4 V vs. RHEでの尿素生成のファラデー効率は0.35%であり、副生成物であるCONH3のファラデー効率も2.05%0.16%と低かったことから水素発生等の副反応の影響が大きいと考えられる。今後は、水素発生等の副反応の抑制によるファラデー効率向上と触媒表面積増加による尿素生成量向上を目指す。