表題番号:2024C-462 日付:2025/04/04
研究課題運動技能の再構築を支援するためのシステム論的アプローチに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 上杉 繁
研究成果概要
人間は多様な運動が可能であり,成長の過程において,他者から教示されることなく自ら運動を構築することができる.そして,運動技能の向上に取り組む際には,自身で考えたり,教わったりしながら,目指す動きを構築することになる.この時,癖が抜けないなどと言われるように,一度実行できるようになった運動をあらためて構築する際には困難さが生じることが多い.本研究ではこうした問題に対し,運動を要素的な動きの相互作用から構成するシステムとして捉える立場から考える.そこで,運動技能の構築をシステムの組織化を促す現象とし,適用可能な理論について調査することにした.
河本英夫は,これまでのシステム論を第三段階まで整理し,第四,第五段階へ拡張している.第一段階は動的平衡系,第二段階は自己組織化,第三段階はオートポイエーシスであり,第四,第五段階はオートポイエーシスをさらに発展させたシステムである.運動技能の再構築を,既に設定された要素ではなく,産出の過程で生み出される構成素が組織化するプロセスとして考えるために,オートポイエーシスとして捉える必要がある.第三段階のシステムは,構成素を生み出し,その構成素の関係によりシステムの構造が形成する機構である.そして第四段階のシステムは,システムにおける活動を自ら感じ取り,イメージを手がかりとして調整する機構である.最後に第五段階のシステムは,システム自身の発達や能力などの潜在的な作動の形成に関与する機構であり,システム内部におけるプロセスと目的に向かう外部視点のプログラムとをつなげる.運動技能の再構築には,第四,第五段階のシステムの機構に関する理論が相応しい.さらに,これらの理論と申請者のグループでこれまでに取り組んできた動作構築を支援するシステムのデザインアプローチとの対応関係についても検討した.