表題番号:2024C-457
日付:2025/02/04
研究課題環境に配慮した土を用いた建築構法のあり方に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 助手 | 森下 啓太朗 |
- 研究成果概要
環境負荷低減と持続可能な生産体制の実現を目指し、土を用いた建築(以下、土建築)の現状と将来展望を明らかにすることを目的としている。地球規模で温室効果ガス削減が求められる中、建築分野においては資源・エネルギー消費や廃棄物発生量の大きさが問題視される。土は採取・製造段階におけるエネルギー消費が少なく、再利用や廃棄物抑制、さらには蓄熱性や調湿性といった特性から、環境優位性が期待される材料である。しかし、近年提案される土建築の中には、固化材や他の建材との複合利用によって土本来の循環性を損ない、結果として環境負荷の高いものも存在する。
本研究では、まず国内外の土建築事例を広く収集し、利用状況、使用材料、生産方法、構成要素などの動向を包括的に整理した。その上で、ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用し、土建築の環境負荷を定量的に評価するため、各プロセス(採取、製造、施工、使用、廃棄)のエネルギー消費量や二酸化炭素排出量、資源利用量などのデータを整備を行い、環境負荷要因の整理を行った。特に、土自体の採取や製造段階におけるエネルギー効率の良さ、再利用性、廃棄物削減効果に注目し、固化材や他の建材との複合利用が全体の環境負荷に与える影響を詳細に分析した。
また、長年にわたり土建築に携わってきた採取、製造、施工などの事業者が労働人口減少や高齢化の影響を受け、生産体制の維持が危ぶまれる現状を踏まえ、事業者間の連携や技術継承の実態についても分析を実施した。これらの取り組みと課題を整理することにより、今後、現代的な要求を満たしながら環境負荷の低減と循環性を維持する土建築のあり方、ひいては持続可能な生産体制の構築に向けた具体的な指針が得られると考えられる。