表題番号:2024C-453 日付:2025/04/02
研究課題生体データに基づいたオフィス空間における知的生産性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 講師 鵜飼 真成
研究成果概要
本研究は、リストバンド型デバイスを用いて得られた生体データから執務者の精神的状態を推定し、それと主観的な心理申告やモチベーションとの関係を分析したものである。精神的状態は「ストレス・興奮」「集中」「リラックス」「覚醒」の4象限に分類され、脈拍数やLF/HF比を基に時間ごとの変動を可視化した。主観的な申告との比較では、ストレス・興奮やリラックス状態において統計的な整合性が確認され、推定手法の妥当性が示された。一方で、モチベーションとの関係は単純な相関では説明が難しく、変動時の精神的状態の分布が重要とされた。実測データの分析では、モチベーションが向上した場面ではストレス・興奮や集中状態が維持され、特に「仕事の進捗が良い」「集中できる環境」などの心理的要因において顕著であった。対して、歩行や眠気、温熱環境の不満といった生理的要因に関する申告では、モチベーションの低下とともにリラックス状態が増加する傾向が見られた。また、半日単位での申告数と精神的状態の関係から、適度なストレス・興奮はモチベーションを高める一因となりうること、リラックス状態の増加は倦怠感と結びつく可能性が示唆された。これらの結果から、日々の働き方や執務空間が精神的状態の分布に影響を与え、それがモチベーションと密接に関わっていることが明らかとなった。