表題番号:2024C-447 日付:2025/03/24
研究課題福岡県星野地区における浅熱水金銀鉱床の成因的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助教 五ノ井 祐二
(連携研究者) 九州大学 教授 今井 亮
(連携研究者) 九州大学 准教授 米津 幸太郎
(連携研究者) 早稲田大学 教授 野崎 達生
(連携研究者) 早稲田大学 研究助手 鳥本 淳司
研究成果概要

 福岡県八女市の星野地区,特に西部の大規模鉱脈において地表踏査,岩石試料採取を行い,早稲田大学創造理工学部環境資源工学科の実験室において,鉱脈および母岩試料の偏光顕微鏡観察,X線回折 (XRD),蛍光X線のマッピング分析 (Mapping-ED-XRF)を行った.その結果,鉱脈は石英脈および熱水角礫岩 (母岩片,石英脈片を含む) からなり,熱水角礫岩が大部分を占めることが明らかになった.石英脈は大部分が細粒~極細粒の石英からなり,塊状 (massive) 組織,葉片状 (bladed) 組織,櫛歯状 (comb) 組織を示し,熱水角礫岩は黒色~灰色のごく細粒シリカの基質からなる.また,母岩は脈際では珪化,緑泥石・イライト化,粘土化がみられることが明らかとなった.産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門において,石英脈の流体包有物の測定を行い,均質化温度,氷融解温度から推定される鉱化流体の捕獲温度,塩濃度はそれぞれ平均約180℃,約1%であることが明らかになった.以上のような脈石および母岩鉱物の特徴は,地下深く循環した中性熱水によって形成されたと考えられる.一方,地域北側において,白色および玉髄質の基質からなる熱水角礫岩の産出が確認され,顕微鏡観察およびXRDの結果,粒径300 µm程度の結晶質の明礬石の存在が確認された.一般的に結晶質の明礬石は,深成 (地下水面下最大2 km) のマグマ性揮発性物質を含む酸性熱水によって形成されたと考えられる.来年度は,これらの性質の異なる熱水活動の時間および空間的関係について,また,地区東側の熱水系についてもさらに研究を進めていく予定である.