表題番号:2024C-446 日付:2025/02/05
研究課題自然由来汚染の環境影響およびリスク評価に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 川邉 能成
研究成果概要

現在、建設工事やインフラ整備などで発生する自然由来に起因した重金属類による岩石・土砂などの汚染が問題となっている。また、土壌や地下水から環境基準値を超過する重金属類が検出された場合、この汚染が自然由来に起因したものか、人為由来のものか判別することが困難となっている。わが国では自然由来による重金属類の汚染はその含有量や溶出量の目安で評価されることが多いが、これらの値は科学的根拠に基づいたものとはなっていない。この理由としては、自然由来重金属類の発生メカニズムが明らかにされていないことがその一つと考えられている。そこで、本研究では、特に自然由来汚染の発生件数の多い、土壌からの重金属類の溶出に及ぼす地質・生物・化学・物理的影響を明らかにすることを目的とした。また、得られた結果や既存のデータベースなどを活用することで、統計学的手法などによる人為汚染と自然由来汚染との判別を目指した検討を行った。

鉱山周辺より採取した土壌を用いて、生物的作用を考慮した長期溶出試験を実施したところ、重金属類によって生物的作用により溶出が促進されたり、抑制されたりすることが明らかになった。したがって、自然由来重金属類の周辺影響を評価する上で、土壌微生物の作用を考慮することが重要であると考えられた。

また、これまで明らかになっている表層土壌中の重金属類のデータベースを用いて、自然由来重金属類汚染の抽出を試みた。その結果、主成分分析とクラスター分析による統計学的解析によって土壌における化学成分の特徴をある程度抽出することが可能であった。一方、これらの解析だけでは、汚染、非汚染の閾値や自然由来と人為由来に起因する汚染の判別は困難であるため、今後機械学習などによる評価が必要と考えられた。