表題番号:2024C-418
日付:2025/02/18
研究課題CSRを考慮した資本コスト推定方法の開発
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 商学学術院 大学院経営管理研究科 | 教授 | 竹原 均 |
- 研究成果概要
- 本研究では企業のCSR活動のうち, 特に人的資本経営に焦点をあて, 人的資本の蓄積が企業の自己資本コストを低下させるかについて実証的に確認した. まず最初に東洋経済CSRデータベースを用いて, 独自の人的資本に関する6次元評価スコア: (1) Work-Life Balance (WLB), (2) Equal Opportunity (EO), (3) Human Resource Development (HRD), (4) Job Strain (JS), (5) Pecuniary Rewards (PR), and (6) Long-Term Employment (LTE)を計測した.次に自己資本コストについては, CAPM, Fama and French (1993, 2015,2018), Carhart(1997)で提案されたマルティファクターモデルに基づいて推定した. さらにいわゆるインプライド法を併用し, 配当割引モデル, Frankel and Lee(1997),およびGebhardt, Lee and Swaminathan(2001)に基づくインプライド自己資本コストも計測している.このようなファイナンスで多用されるアセットプライシングモデルに基づく自己資本コスト推定値, 会計学で多用されるインプライド自己資本コストの両方を含む長期パネルデータ(2005~2024年,20年)を用いた実証分析の結果, Work-Life Balance, Pecuniary Rewards, Long-Term Employmentが自己資本コストを低下させる傾向にあることが分かった. したがって、良好な従業員関係を維持する企業における人的資本の蓄積は、長期的には企業のリスクと自己資本コストを低減するものと考えられる. しかしながら人的資本と自己資本コストとの関係は, 自己資本コストの推定方法, ならびに資本構成に大きく依存しており, 人的資本の変化が自己資本コストに与える影響を, 単純な「自己資本コスト計算式」, あるいは「自己資本コスト推定モデル」の形で表現することには成功していない.