表題番号:2024C-417 日付:2025/04/04
研究課題コロナ禍における消費者購買行動の実証分析ーテキスト分析を用いて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 准教授 加納 和子
研究成果概要

これまでトイレットペーパーの取引別購買データを用い、コロナ禍初期の201912月から20208月における消費者行動の変化について分析を行ってきた。本年度は当該期間の行動変化についての分析を深めるため、社会情勢変化およびメディア報道との関連についての分析を行うこととし、日本経済新聞社より該当期間における日本経済新聞朝刊および夕刊の記事を取得した。第1に、提供された記事の特徴を把握するため、日別記事数や文字数、頻出ワードの把握、共起分析等を行った。これにより、消費者行動の分析に資すると思われる記事分類や中心的な話題の推移を把握した。また感情分析を行うことにより、記事のセンチメントの推移を観察した。第2に、消費者行動の変化、特にトイレットペーパー等の消費財購入に関連すると考えられるワードに着目して出現頻度の推移を観察した。トイレットペーパーの出現頻度はそれほど高くなかったため、購買に影響があると思われるキーワードを含めて分析することとした。主なキーワードは、コロナ、トイレットペーパー、緊急事態宣言、外出制限、デマ、買いだめなどであるが、これらについて提供された全記事を対象として日別出現頻度を確認した。第3に、家計別購買確率、購買量、購買日における前回購買からの経過日数等を被説明変数とした、固定効果モデル、プロビットモデルおよびトービットモデル等を用いて推計を行った。説明変数としてワードの出現頻度を加えることにより、コロナ禍の情勢変化の影響をみることとした。また、キーワードの日別出現頻度については当日のものだけでなく、ラグとリードも含めて分析を行った。現時点で得られている結果としては、(1)コロナという言葉の出現頻度は購買確率等と負の関係をもつこと、(2)緊急事態宣言・外出制限のワードについては、当日・一期のラグ・一期のリードが購買確率および購買量が正の関係をもつこと、(3)トイレットペーパーというワードの出現回数自体は購買との相関が低いことなどがあげられる。(2)については報道が増加する直前直後に購買確率と購買量が増加していることを示しており、外出制約が高まるタイミングで追加的な購買が促されたと考えられる。現段階では単独のワードの出現頻度のみを対象としているが、今後は共起分析や感情分析の結果を反映させた分析を行う予定である。