表題番号:2024C-416
日付:2025/04/02
研究課題開発援助が拠出国および受入国の生産性に与える影響:援助効果のミクロ的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 商学学術院 商学部 | 教授 | 高瀬 浩一 |
- 研究成果概要
- OECDの下部組織である開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)は主要開発援助拠出国により構成されている。OECDのDACによると、開発援助 (Official Development Assistance: ODA)は受入国の経済発展と厚生向上を目的とし、受入国への無償資金協力(災害支援や技術協力を含む贈与)と受入国にとって優しい条件で貸し出される有償資金協力(融資)のことである。開発援助は受入国の道路、空港、港湾、水道、電力、ごみ処理などのインフラ投資により、経済成長の基盤を確立し、マクロ経済の生産性を向上させる。さらに、開発援助は初等、中等、専門技術などの教育支援を通じて、受入国の人的資本を質的・量的に向上させて、労働生産性を向上させる。また、開発援助は受入国の人権・法・会計・金融・制度などを整備し、民間や政府の腐敗度を減らし、ガバナンスを向上させ、結果として全要素生産性を向上させる。このような開発援助の受入国のマクロ経済に与える効果(援助効果)については、これまで数多くの理論的・実証的文献があるが、援助効果についての明確なエビデンスは示せなかった。そのため、最近では、開発援助が受入国の企業のビジネス環境や労働者(現地住民)の生産活動に与える影響について分析するミクロ的分析が行われるようになった。今回の研究では、開発援助によるインフラ整備後に受入国で発生する副作用的問題に焦点を当てる。途上国では主要なインフラはODAにより整備されてきたが、その管理と維持については、自国負担になることがほとんどで、最低限度のメンテナンスも行われていないことが多く、開発援助の援助効果が継続しない主な要因と考えられる。我々は囚人のジレンマゲームを応用して、このメンテナンス問題を表現するメンテナンスゲームを考案し、途上国、特に、太平洋島嶼国で経済実験を実施している。この研究費により、その比較実験として、2025年3月に早稲田大学において、メンテナンスゲームの実験を実施した。現在、研究成果を論文に纏めるべく、研究結果を分析中である。