研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 商学学術院 商学部 | 教授 | 尾崎 祐介 |
- 研究成果概要
Gollier (2010) は経済成長と環境保護の両方を考慮した生態的割引率を提案した。この割引率は経済的富と環境状態の両方で効用が決まる二変数効用関数を持つ代表的投資家を前提にして、この投資家が無差別になる環境投資として生態的割引率の特徴付けを行った。つまり、生態的割引率は環境投資を判断する際の閾値の役割を果たして、それが減少することは環境投資を推進させることを意味している。本研究では、経済と環境の間に依存関係を導入して、その依存関係が生態的割引率に与える影響について理論的に考察した。具体的には、依存関係が生態的割引率に与える二変数効用関数の条件について導出した。本研究では、Eeckhoudt and Schlesinger (2006) の枠組みを用いた Gollier (2021) のリスク割当の一般理論を用いて依存関係を定式化した。この定式化では相関と一対一の関係があるパラメータによって依存関係が表されるので、このパラメータを相関として見なして分析を進めることができる。相関の増加が与える影響は、交差の高次微分の符号によって分かることが理論的に示された。具体的には交差慎重と呼ばれる条件が満たされる場合、相関の増加によって生態的割引率が減少、つまり、環境投資が促進されることが分かった。交差慎重が満たされるかについては、Eeckhoudt et al. (2007) が提案した理論的な枠組みで検証することができる。医療経済学の分野では、Attema et al. (2019) で二変数効用関数の条件が満たされるかについての検証を行った。本研究は、理論的な分析は終えているが、経済実験の検証など追加的な分析を行った後、研究成果を論文としてまとめて、最終的には査読付きの国際学術誌への掲載を目指す。