表題番号:2024C-389 日付:2025/03/26
研究課題GNSSデータや衛星重力データを組み合わせた水循環と地殻変動の総合的描像
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 講師 田中 優作
研究成果概要

本研究では、GNSS観測と、観測データの解析、及び重力観測衛星データの解析から、特に地震に伴う地殻変動の情報の抽出を行った。

まずGNSS観測については、2024年能登地震の後に進行する地殻変動の詳細を調査するため、佐渡島にGNSS観測点を設置し、半年分の地殻変動に関するデータを得た。このデータを国土地理院の展開するGNSS観測点(電子基準点)の観測データと合わせて解析することで、佐渡島で進行する地殻変動の様子を捉えた。具体的には、202411日の地震発生後、202412日から20245月の上旬までは「アフタースリップ」と呼ばれる、ゆっくりとした断層破壊現象が地殻変動に対する支配的なメカニズムとして進行し、その後、地殻変動に対する支配的なメカニズムは岩石の粘弾性緩和(地震後に生ずる、地下の応力の空間的な不均一が時間をかけて解消される現象)にシフトした様子が観測された。そして粘弾性緩和に起因すると考えられる地殻変動は、佐渡島全体を、佐渡島南端部を中心として、北を上に表示した地図上で見ると時計回りになるような方向に回転させて歪ませる、特徴的な振る舞いを示していた。この地殻変動は現在も進行中であるため、この地震の地殻変動全体に関する結論を出そうと試みることは時期尚早ではあるものの、これは内陸地震が引き起こす地殻変動についての重要な知見である。(論文・学会発表はまだ行っていない)

重力観測衛星データの解析については、大別して二つの成果が得られた。一つ目は2011年東北地方太平洋沖地震の後に東北地方を中心として進行している重力の局地的な変化が、海洋プレート側と大陸プレート側で違う進み方をしている(異なる時定数を持っている)ということの発見である。現在は地下の三次元的な粘性構造の推定を試みている。二つ目は地震時重力変化についてのデータ解析の方法の改良で、これについては現在、英語論文を執筆中である。