研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 教育学部 | 准教授 | 吉竹 晋平 |
(連携研究者) | 先進理工学研究科生命理工学専攻 | 修士1年 | 月本将太郎 |
- 研究成果概要
本研究は、沖縄県石垣島の小規模マングローブを対象として、マングローブ生態系の炭素循環に影響を及ぼすと思われるカニ類などの底生生物の巣穴(ベントス巣穴)の基本的データ、および巣穴内に溜まった水に含まれる溶存無機炭素(DIC)濃度に関するデータを取得することを目的とした。
現地調査により、現地におけるベントス巣穴の直径および密度を測定した。また、いくつかの巣穴に樹脂を流し込んで硬化後に掘り出して型取りを行った。この巣穴を型取った樹脂を、3Dスキャンソフトウェアを用いて解析し、その表面積・体積を算出した。さらに、下げ潮に伴って干出した巣穴入口から、巣穴内部に溜まった水を経時的に採取し、これを実験室に持ち帰ってそこに含まれるDIC濃度を定量した。
当該調査地では巣穴を形成する可能性がある底生生物出として、主にフタバカクガニと、シオマネキ類(オキナワハクセンシオマネキなど)、オキナワアナジャコなどが確認された。ベントス巣穴の開口部直径は0.5~2.7 cmであり、その密度は21.3~31.4 個/m2であった。樹脂による型取りで明らかとなった巣穴形状は、単純なI字状・J字状・U字状のものから、多くの分岐やらせん構造を持つ複雑なものまで非常に多様であったが、後者のような構造を持つ巣穴では比表面積が大きかった。
巣穴内の水に含まれるDIC濃度は、周辺の水(海水や河川水、満潮時に地表を覆う水)よりも明らかに高かったが、干潮・満潮の間であまり大きな経時変化を示さなかった。また、巣穴内の深度によってもDIC濃度に違いは見られなかった。また、巣穴特性(体積・表面積・比表面積)は巣穴内部の水のDIC濃度と有意な相関を示さなかった。以上の結果から、マングローブ林では巣穴入口に入った水に、巣穴壁面を通してDICが移動し、その水が比較的速やかに堆積物に浸透していくことで下方流出するのではないかと考えられた。