表題番号:2024C-387 日付:2025/02/05
研究課題競争的研究費の採否と研究者の成果等について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 大西 宏一郎
研究成果概要

企業の長期的な経済成長を達成するためには、大学等におけるサイエンスの成果が欠かせない。しかしながら、そのようなサイエンスをどのようにマネジメントすべきかについては、これまで十分に研究が行われていない実情がある。研究費の主要な配分方法であるピアレビューシステムは、大きくはないものの、ある種バイアスをもたらす可能性があることを示す研究が増えてきている(Brogaard, Engelberg, and Parsons 2014; Carrell, Figlio, and Lusher 2022; Cloos, Greiff, and Rusch 2023; Ductor and Visser 2022; Laband and Pette 1994; Zinovyeva and Bagues 2015)。本研究では、審査員と応募者とのソーシャルタイが審査スコアにどのような影響を与えているのかを実証的に分析した。なお、ソーシャルタイはえこひいきなどのマイナス面が強調される傾向にあるが、審査書類ではわからない情報の保有につながることから審査精度を高める可能性がある。分析結果では、審査員と応募者のとの間に過去の共著関係、科研費での共同研究関係、部局レベルの同僚、部局は異なるが大学レベルでの同僚である場合、他の審査員よりも審査スコアが高いことが示された。しかし、審査スコアと研究成果との関係性を見た場合、過去の共著関係がある場合にはマイナスの相関がある一方で、共同研究関係、部局レベルの同僚では非有意、大学レベルの同僚ではプラスの相関があり、その意味付けがタイの強さによって異なることが示された。この結果は、強いソーシャルタイは審査精度にマイナスである一方で、弱いタイは審査精度にプラスに働くことを意味しているといえる。利益相反規定の策定にはより複雑な考慮事項があることを示している。