表題番号:2024C-366 日付:2025/03/28
研究課題スポーツ事故に対する意識及び知識の実態調査~教職課程学生を対象として~
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 講師 吉村 茜
研究成果概要

子ども期の運動の重要性が論じられ学校管理下での体育・スポーツ活動が一層重要視される中、一方でそれらの活動中における重大事故が懸念されている。文部科学省の報告によれば、過去12年間で発生した学校での体育・スポーツ活動中の死亡事故例は470例であり、このうち7割以上が突然死であった。こうした背景から、体育・スポーツ活動中の児童生徒の死亡事故を防ぐ点で、ファーストレスポンダーになり得る学校教員が一次救命処置に関する知識や意識を高めることは急務であると言えよう。本研究では、将来的に教員になり得る教職課程学生158名を対象に、一次救命処置に関する知識および意識の実態について調査した。全国の計3大学に所属する教職課程学生を対象に、オンラインフォームのURLもしくはQRコードを配布することでアンケートへの回答を求めた。調査項目は、①属性(学年、教員志望状況、取得見込み免許状の種類・科目、救急処置に関する授業履修状況、以上計4項目)、②一次救命処置に関する知識(正誤テスト計12項目)、③一次救命処置に関する意識(対応意欲、自信、学習意欲、以上計3項目)を問う計19項目であった。 一次救命処置に関する知識について、全体の中央値は12点満点中10.0点(平均値:10.2±1.7点)であった。救急処置の授業を履修した学生とそれ以外の学生で比較したところ、中央値に有意な群間差は認められなかったが(p=0.685:Mann-WhitneyのU検定)、AEDの使用方法に関する項目において有意な偏りが認められ、正解者数は後者より前者の群で多かった(p<0.01:χ二乗検定)。一次救命処置に関する意識について、緊急時における実施意欲を示した学生は94.3%であった一方、実施に対して自信があると回答した学生はわずか30.4%に留まった。また、今後一次救命処置に関する知識や技能を身に付けることに意欲を示した学生は96.8%であった。本研究の結果より、教職課程学生に向けた一次救命処置や救急処置に関する啓蒙の必要性が示唆された。