表題番号:2024C-364
日付:2025/03/31
研究課題地球深部における鉄と水の相互作用による元素移動の解明
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 教育学部 | 准教授 | 飯塚 理子 |
- 研究成果概要
- 炭酸塩は、地球規模の炭素の循環に関わる基本的な地質学的プロセスに関与している。また、250 km以深のマントルでは、鉄の不均化反応(3Fe(II) → 2Fe(III) + Fe(0))により、金属鉄が存在すると考えられている。したがって、沈み込んだ炭酸塩は、マントル中に分散している金属鉄と反応し、かつ多量の水と相互作用しうる環境にある。本課題では、水と炭酸鉄の高温高圧実験を行い、地球深部の沈み込み帯における反応メカニズムを明らかにすることを目指した。研究方法として、天然鉱物のシデライト(鉄炭酸塩, FeCO3)を粉末にしたものをペレットに成形して試料カプセルに入れ、水源として含水鉱物ブルーサイト(Mg(OH)2)を一緒に入れて高温高圧下で脱水させ、反応させた。高温高圧発生にはマルチアンビルプレスを用い、10 GPa, 1200ºCの上部マントル条件下で数時間保持した。その後、クエンチして回収した試料中の生成物や元素組成をX線回折測定や電子顕微鏡で同定し、未反応物質や副生成物の有無を確認したところ、一部にメタリックな部分が見られ、金属に富む相の生成が確認された。また、ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いて、シデライトに対してpH=9以上のアルカリ溶液を反応させた。高エネルギー加速器研究機構KEKのフォトンファクトリー BL18Cにてレーザー加熱した後に測定したX線回折パターンには、出発物質のシデライトに混ざって、含水鉄炭酸塩やマグネタイト、鉄水酸化物などが生成した。これらの相の生成と酸化還元反応には圧力やpHが大きく関与していることが分かった。現在、含水鉄炭酸塩の単相の回収を試みている。今後は、最適な圧力やpH条件を見出すことで、沈み込み帯における鉄や炭素、水素(水)の地球内部における元素循環と物質の移動、鉱物間の相互作用の全容を明らかにできることが期待される。