表題番号:2024C-362 日付:2025/02/04
研究課題日中古代寺院における伽藍配置の比較考古学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 助手 高橋 亘
研究成果概要
前年度の学術振興会DC2に申請したが不採択であった為、本特定課題を取得して研究を進めた。
具体的には、日本と中国の伽藍配置を比較して、飛鳥・奈良時代の伽藍配置を東アジアの中で位置づける試みを行った。なお、研究を進めるにつれて中国だけでなく、朝鮮半島との比較の必要性が浮上したため、日中だけでなく朝鮮半島も含めた分析を進めた。
 中国には2回ほど渡航し、現地調査及び関連発掘報告書に基づいた資料調査を実施した。また韓国にも1回渡航し、現地調査及び関連発掘報告書に基づいた資料調査を実施した。中国の初期寺院を考究するには、仏教の源流であるインドの寺院も分析する必要を感じたため、インドでも1回調査を実施した。
 調査の結果、漢唐期(唐代以前)の東アジアにおける伽藍配置は北に金堂、南に塔を配置する「前塔後殿式」の伽藍配置が圧倒的に多く、東アジア全域で伽藍の根幹をなしていたことが判明した。一方、唐が太宗の治世になると640年前後に百済、新羅、倭でそれぞれ九層木塔をもつ大規模な官寺が建立される。これらの寺院はいずれもオリジナリティのある特殊な伽藍配置で創建されるが、百済弥勒寺や新羅皇龍寺が前塔後殿式の範疇で創建されるのに対し、倭の百済大寺は法隆寺式という全く新しい伽藍配置を生み出した。これを「塔殿並置式」と設定し、現在も議論を進めている。