研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 准教授 | 中門 亮太 |
- 研究成果概要
今回の特定課題研究では、縄文時代後期後葉における東北系土器の遠隔地出土状況を探ることを目的に、資料調査を行った。
7月に、三重県度会町ふるさと歴史館において、森添遺跡出土資料の調査を行った。本遺跡から出土した東北系土器は、器形や施文技法などの点で東北地方のものと遜色ない、非常に出来が良いものであることを確認した。一方で、在地の粘土が使われているとの胎土分析結果があり、東北地方からの直接的な搬入品ではないことがわかる。在地土器と比較すると、土器の内面調整において、在地土器はケズリ調整を施しているのに対し、東北系土器は丁寧なナデによって仕上げられていた。そのため、森添遺跡における東北系土器は、東北系の製作技術を持った人の移動が背景にあったと考えられる。また、東北系土器として報告されているものの中に、東北地方では見られない文様描出技法が用いられているものや、当該期の関東地方に特有の貼付装飾を持つものが数点確認できた。前者については、東北系土器の製作者との交流により生まれた、模倣的な土器と捉えておきたい。後者については、東北系以外にも北陸系、中部高地系、東海系、などの異系統土器が出土しているため、関東地方における当該期の土器群を確認した上で、改めて調査を行う必要がある。これらは、在地土器と同じケズリ調整が行われており、東北系とは異なり、在地の人々が模倣して製作した可能性が考えられる。
11月には、京都府埋蔵文化財調査研究センターで、京丹後町平遺跡出土資料の調査を行った。東北系の土器としては、晩期初頭の資料が中心で、壺は東北地方との直接的な交流をうかがわせるものであった。深鉢、鉢は東北系の文様が少し崩れており、北陸を経由してもたらされた可能性がある。直接的な搬入の可能性が壺に限られるため、当時の搬入のあり方について、土器だけではなく内容物を含めた移動の可能性を考える必要がある。