表題番号:2024C-354 日付:2025/04/01
研究課題王縉とその文学創作について―王維との関わりを中心に―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 紺野 達也
研究成果概要
 本研究課題は、盛唐から中唐初期の政治家であり、文学者でもある王縉とその文学創作について、実兄である王維との関わりを中心に考察したものである。 王縉は制科にも及第し、生前より文章家としても知られていた。しかし、その文集が新旧『唐書』にも著録されず、また現存作品も乏しいことから、文学者としての研究はほとんど進んでいない。 そこで、研究代表者は、新旧『唐書』の王縉伝および筆記史料、小説などにおける王縉とその評価に関する記述を収集し、その生涯について整理を進めている。また王縉の関係する、もしくは関係すると思われる詩文についても、その表現を考察した。本研究課題では、王維との関わりを明らかにするという目的から、特に王維最晩年における「責躬薦弟表」について重点的に研究をおこなった。 あわせて現存する詩文について、その内容と表現について調査を進めた。特に王維やその他の友人と唱和した、あるいは唱和したと思われる作品に着目し、繋年や表現について考察した。特に著名なモウ(車罔)川荘における作品については王維・王縉のそれぞれの「別モウ(車罔)川別業」詩でどのような共通点・相違点があるのかについて調査した。 なお、王縉についての言及や評価については、後世の王維の別集における注釈や年譜などにも示されている。そのため、それらの別集の編纂情況についても研究を進める必要がある。研究代表者は、特に清の趙殿成の『王右丞集箋注』に着目し、明代の顧起経による『類箋王右丞集』などと比較しつつ、王縉に関する言及について分析を進め、どのような点に趙殿成が注目したかを考察している。 上記の研究の成果については、その一部を2024年度中に口頭発表で報告している。また2025年度中に論文として公刊する予定である。