表題番号:2024C-352
日付:2025/04/04
研究課題哲学対話は哲学と教育学への尊重をいかに担保し得るか:反知性主義に陥らない哲学と教育の公化の模索
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 講師 | 山辺 恵理子 |
- 研究成果概要
本研究では、「子どものための哲学(Philosophy for Children;以下、P4C)」という哲学対話のアプローチに着目し、その実践の支える哲学と教育学の学問知が軽視され得る課題とその対策を明らかにすることを目的に設定し、国内外の先行研究のレビューを行いながら、学問知の確立と学問の公化を両立する新たな実践方法の開発を行った。
第一に、P4Cを確立したマシュー・リップマンが制作した子どものための哲学教材を部分的に邦訳したうえで、都内私立中学校と連携し、その邦訳教材を活用したP4Cの実践を同校教師に手掛けてもらい、その成果を分析した。第二に、2024年8月にイタリア・ナポリで開催されたP4C実践/研究者の学会、ICPICの大会に参加し、海外の研究者や実践家の最新の取り組みに関する情報収集を行なった。第三に、演劇ワークショップの手法を取り入れることで、P4C実践における学問知と学問の公化の良好なバランスを模索するために、俳優やグラフィック・レコーディングの専門家と連携し、3回にわたってワークショップを開催した。その3回目の実践において、マシュー・リップマンの哲学教材の邦訳を台本として用いたイマーシブ・シアターの手法を取り入れることで、学問知の声(台本に載せられた哲学者リップマンの声)と公化された声(参加者がその場の対話で発する声)を区別しながらも融合させる方法に辿り着いたことは、本研究の最大の成果の一つといえる。
その他、これまでの研究をもとに、デンマーク領グリーンランド自治区の教育と脱植民地化をテーマとした対話型授業のための教材を作成し、本学紀要に投稿した。