表題番号:2024C-347
日付:2025/02/10
研究課題事象関連電位によるN400成分:資源配分量と意味量による効果の検討
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 教授 | 日野 泰志 |
- 研究成果概要
- 事象関連電位の測定では、語の提示から400ミリ秒経過後に、N400と呼ばれる電位変化が生じ、この成分は語の意味処理を反映すると解釈されている(e.g., Kutas & Hillyard, 1980)。しかし、N400の振幅がどのようなプロセスに依存するのかという説明は、研究間で異なる。例えば、プライムを伴う語彙判断課題では関連なしペア(e.g.,改築-電流)に対するN400の振幅は、反復ペア(e.g., 電流-電流)に対するN400の振幅よりも大きくなる (e.g., Grainger & Holcomb, 2009)。これは、プライムとターゲットにより活性化される意味情報間の統合処理に要する努力量(処理資源配分量)が大きいほどN400の振幅が大きくなると説明されている。一方、単一刺激提示による語彙判断課題では、N400の振幅は、ターゲット語により活性化される意味量に依存すると説明される(e.g., Haro, Demestre, Boada & Ferre, 2017; Muller, Dunabeitia & Carreiras, 2010)。そこで、本研究では、資源配分量の差による効果と活性化される意味量の差による効果の頭皮上分布を確認することで、この2つのN400効果を分離可能かどうか検討した。資源配分量の差による効果として意味的プライミング効果と反復プライミング効果を取り上げた。ターゲット語により活性化される意味量の差による効果としては、心像性効果と意味隣接語効果を取り上げて検討したところ、N400心像性効果は頭皮全体で観察されたものの、意味隣接語効果は、前頭部で極大化する傾向が認められた。一方、意味的プライミング効果と反復プライミング効果については、中央部・頭頂部の電極で効果が極大化する傾向が認められた。このように、前頭部で観察されるN400効果と中央部・頭頂部で観察されるN400効果は、それぞれ異なるプロセスによって生じる効果である可能性が考えられる。今後もさらに、観察されるN400効果とその頭皮上分布を検討することで、N400効果の背景にあるプロセスの性質を分離できるかもしれない。