表題番号:2024C-346 日付:2025/02/13
研究課題中・高年期女性犯罪者が犯罪に至る過程についての検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 藤野 京子
研究成果概要
 欧米では女子非行少年がいかにして犯罪をするに至ったかについての経路研究がなされている。古今東西を問わず人生において青年期が最も犯罪が多発する時期であることから、この時期に着目した研究が多いことがその一因と推測される。一方、男女を問わず成人期以降の犯罪についての検討は概して活発に行われてはいない。ただし、こうした経路は年齢によって異なると推測される。我が国の近年の刑務所においては高齢者の受刑者比率が多いことから、その実状を明らかにすることは意義があり、就労は犯罪抑止につながるとされていることから、本研究では女性受刑者の就労実態を明らかにするために調査を実施した。
 まず、一般女性と受刑女性について、就労歴や最長の仕事をやめた理由、就労の目的等の差異を明らかにした。女性にとって就労の仕方は婚姻状況によって異なると想定されることから、未婚、婚姻中、離別・死別といった婚姻状況別に一般女性と受刑女性にどのような違いがあるかも検討した結果、転職回数や支払いの滞納歴等に差異が見られた。さらに、一般女性と受刑女性を合わせて諸変数を投入したクラスター分析を行い、各クラスターにどのような傾向があるかを検討したところ、若年群(群4)に加えて、就労期間が短い中高年群(群3)、転職歴が多く最も長く従事した仕事をやめてからの年月が長い中高年群(群2)、転職歴が少なく最も長く従事した仕事をやめてからの年月が短い中高年群(群1)に分かれ、これらの群における婚姻状況においては、群4が未婚、群3は婚姻中が多いことが示された。また、受刑女性は群1、群3に分類される比率が少なかった。このほか受刑女性について上記群間の差異を検討したところ、群3と群2において再入受刑者率が高く、群1が遅発型犯罪者であることが示された。このほか群3に薬物事犯者が多く、学歴については群1が高く群3が低いこと等も示された。