研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文学部 | 教授 | 竹村 和久 |
(連携研究者) | 北里大学 | 教授 | 岩満優美 |
(連携研究者) | 東京理科大学 | 教授 | 井出野尚 |
(連携研究者) | 静岡県立大学 | 准教授 | 玉利祐樹 |
(連携研究者) | 北海学園大学 | 講師 | 村上始 |
(連携研究者) | 早稲田大学 | 助教 | 川杉桂太 |
- 研究成果概要
人間は主に多数派に適したルールの下で予測誤差が少ない世界に適応しようとする一面があるが、日々の困難な状況を解決するための知識を追求し環境世界に対して真摯に取り組む主体として行動することを「当事者化」と呼んでいる(笠井,2021,https://tojishaka.net/)。意思決定の当事者化に基づく処方的意思決定論は、その過程を支援するアプローチの処方的意思決定論である。処方的意思決定論は、意思決定論の中で生まれたものであり、伝統的経済学の規範的意思決定論とは異なり必ずしも合理的な意思決定を促すものではなく、また記述を行う行動意思決定論とも異なる第三のアプローチである(Takemura, 2021a,Behavioral decision theory, Springer Nature; 竹村・藤井,2015,意思決定の処方,朝倉書店)。ナッジには本人の同意のない形で意思決定を社会的に望ましい方向に導いているが、人々の同意や自発性を考慮したナッジ以外の観点からの研究も期待されている(Grüne-Yanoff, & Hertwig, 2016, Minds and Machines, 26, 149-183; Takemura, 2021b, Escaping from bad decision, Academic Press)。しかし、これまでの研究では、行動意思決定論に基づくものであり処方的意思決定論ではなく、さらに精神疾患患者や発達障碍者などの少数派の立場からの当事者の個別の理解に基づく処方的意思決定論は全く展開されていなかった。そこで本研究は、この問題を克服するために、意思決定の当事者化の理解と分析によって、当事者化を促す処方的意思決定論を検討した。本研究の実験では当事者の立場に立って考えられる能力である視点取得に必要な情報を収集し、相手の立場に立って考える課題を作成し,視点取得能力を向上させる課題として提案した。本研究では日常生活を題材にした場面を利用して,視点取得能力の向上を目的とした実験システムの構築を行う。本実験システムは2段階で構成された.第1段階は,他者の立場に立って考える経験を行う段階(実験操作段階)であり,第2段階は第1段階の実験操作により視点取得能力が向上したか測定する段階(視点取能力測定段階)である。また第2段階終了後に、視点取得を下位尺度に持つ質問紙を実施した。本研究では、このような実験による量的研究だけではなく、歴史的事例における文献研究および面談研究などによる質的研究も行った。