研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 教授 | 久保田 治助 |
- 研究成果概要
第二次世界大戦後、地域公民館では民主化教育とともに青年や婦人教育が全国的に行われていった。公民館の目的として社会福祉の普及も掲げられていたが、高齢者に関する社会教育の学習実践の普及は1965年以降となっている。その理由として、民主化教育の主体が若者であり、高齢者は戦争体験者としての慰安を目的としたものが中心であったためである。
長野県伊那市の小林文成の起こした楽生学園や、愛知県犬山市の松浦浅吉が起こした犬山としより学校など、高齢者の社会教育実践が行われていたにも関わらず、社会教育の歴史的系譜に高齢者教育実践が位置付けられていない。また、戦後高齢者への啓発活動として教育映像も多数制作されているが、教育映像に関する歴史的研究も進んでいないという現状がある。
このような状況にもかかわらず、当時の高齢者教育の実践資料や、16ミリフィルムでした現存していない高齢者教育映画などの資料の保管・保存について検討を行うことは、これからの高齢者教育研究の体系化を行う上でも重要である。
本研究では、戦後の全国で行われていた高齢者教育実践についての調査と資料の収集保存、同時代の教育映画のアーカイブス化を行う。この調査研究をもとに高齢者教育の思想や理論と実践の歴史的構造について、日本や海外を含めて研究発表を行うことで、世界的な超高齢社会の到来に向けた高齢者の主体的な学習の視座を提供することが目的である。
結果として、以下の2点が明らかとなった。1つ目は、戦後直後の先駆的高齢者教育実践である楽生学園の設立経緯には、戦後民主化としての宮原誠一を中心とした社会教育実践との関係が深く、高齢期の学習に社会科学の要素が関わっていること。2つ目は、教育映画の保存状況が全国的に廃棄や劣化が進んでおり、研究発展のためにも重要だが、保存のための予算確保が困難な状況にあることである。