表題番号:2024C-333
日付:2025/04/02
研究課題西洋古典古代の叙事詩と悲劇における「疫病」と「戦争」
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 教授 | 宮城 徳也 |
- 研究成果概要
- 昨年度に引き続き、個人研究費と併せて,ギリシャ共和国のアテネに行くことができ,その間,アテネの街とペイライエウスの港をより詳細に実地検分し,合わせて諸博物館とアクロポリスなどの古代遺跡を再訪して,ペリクレス以前の時代から,ローマ支配下の時代,ビザンティン帝国時代のアテネの都市構造を理解する手掛かりを増すことができた.さらに,アテネを根拠地にして、ミコノス島からデロス島、サントリーニ島、クレタ島を訪れ、古代遺跡,博物館を訪ねることができ,先史時代から古代後期にいたるまでの,ギリシャ地域,ギリシャ民族の歴史に関する文献資料に拠らないパースペクティヴを得ることができた.特に昨年度のミケーネ文明遺跡に加えて、クレタ島でミノア文明の時代の遺跡、遺産を詳しく見ることができた。その中で,古代人にとって都市,疫病、戦争と深く関係する城砦、城壁の問題に関しては,2025年6月に刊行予定の坂上桂子(編)『都市の過去・現在・未来』(水声社)に論文「古典古代の文、学作品に見られる都市描写 ホメロスの場合」を掲載してもらうことになっており、既に提出して、校正段階に入っている。この論文を書く際の調査で、ホメロスが都市描写を行なったイリオン(=トロイア)と並び、アテネの描写が詳細であることに築き、叙事詩全体を考える上でも重要な知見を得た。この論文でウェルギリウスなどのラテン叙事詩に関しても論じる予定であったが、この論文と平行して作成し、『比較文学年誌』61号に掲載してもらった論文「アウィアヌス『イソップ寓話詩集』の独創性と意義 「犬とライオン」、「北風と太陽」。「アリとセミ」からの考察」の考察過程で、文学作品化された「イソップ部寓話集」において都市への問題意識が関係性を持っていることに気づき、ホメロス以降の文学における都市描写と都市生活への意識を諸格品を材料にして論じられると言う構想を得たので、以後の研究において古典古代の都市と戦争を考えていく重要な契機を得ることができた。特に昨年以来、城塞、城壁、神殿、広場の遺跡をギリシアで実見したことは、研究上、きわめて重要な体験であったと言えよう。