表題番号:2024C-331
日付:2025/03/31
研究課題民事訴訟における訴訟担当論の再構築
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 大学院法務研究科 | 教授 | 松村 和徳 |
- 研究成果概要
- 本特定課題研究においては、民事訴訟における訴訟担当論の中で、とくに任意的訴訟担当論の研究を主に行った。任意的訴訟担当は、ドイツ法と日本法以外は原則として許容されていない法制度である。しかし、日本法は任意的訴訟担当の許容範囲を拡張しており、それが妥当かどうかを検討するため、わが国民事訴訟の母法国であるドイツ法において、沿革的に任意的訴訟担当はどのような形で認められてきたかに焦点を当てて研究した。ドイツ法では、その発展の初期は、任意的訴訟担当論は、とくに訴訟追行権概念の発展と関連し、1880年代後半のKohlerの見解に代表される任意的訴訟担当不許論が主流であった。訴訟追行権の場合は放棄できない公法上の請求権が問題であり、代理との関係も考慮されていたからである。そして、またこの立場は、現在でもKochやFrankなどにより主張されている。他方、ドイツの判例は登記との関係から早くから任意的訴訟担当を許容してきた。学説もこれに従う。この任意的訴訟担当許容論は、権利者が担当者に権利を付与したこと(授権)を要件とする立場と、授権だけでなく、訴訟担当者の固有の権利保護の利益が存することも要求する立場があり、今日の判例、通説は後者の立場をとっている。しかし、この利益がどのようなものであるかについては、争いがありかつ明確ではないのが今日の状況である。とくに、任意的訴訟担当不許論の立場からは、固有の利益を有する場合には、訴訟担当者は授権がなくとも訴求できるなどの批判もなされている。以上の研究成果から、当事者概念及び訴訟追行権概念をどう把握するかが本質的問題であると思われ、わが国の議論では、訴訟追行権ではなく、当事者適格概念が訴訟担当において前提としている点が大きな問題であり、当事者適格概念の再検討が任意的訴訟担当論の検討のための不可欠な課題として浮かび上がってきた。今後の研究は、この課題の検討を行う予定である。