表題番号:2024C-328
日付:2025/03/24
研究課題預金及び電子マネーに関する刑法上の諸問題
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 法学部 | 助手 | 西村 剛輝 |
- 研究成果概要
- 本研究課題の目標は、刑法(とりわけ、財産犯)において、預金や電子マネーがどのように保護されるのかを明らかにすることであった。このうち、預金の刑法的保護に関しては、従来、預金を現金と同視する傾向があったように見受けられる。たとえば、振り込め詐欺を刑法246条1項によって捕捉する立場がそれである(1項詐欺罪説)。だが、そのような構成は多くの擬制を伴って初めて成り立ち得るが、一体どれほどの利点があるか疑わしい。そこで、本研究課題においては、預金や振込を構成する仕組み・システムにまで遡って分析を行うことにより、預金を端的に債権として捉えるべきとの理解に至った。それにより、振り込め詐欺は刑法246条2項によって処罰されることになる(2項詐欺罪説)。2項詐欺罪説からは、その被害者は、第一に被仕向銀行となる。なぜなら、被仕向銀行こそが、預金債務を新たに負担する主体だからである。それに加えて、預金債権を失うことになった振込依頼人を、第二の被害者と構成することは可能である。ここでは、振込依頼人が預金債権を失ったことと引き換えに、被仕向銀行が資金移動を受けた点を捉えて、第三者利得構成を見出すことができる。2項詐欺罪説を以上のように再構成することは、振込システムに合致した理解であると考える。以上の研究成果は、2025年3月に公表済みである。なお、電子マネーについては研究途上であるが、預金に関する上記理解をどこまで推し及ぼすことができるかが課題となる。