表題番号:2024C-325
日付:2025/04/14
研究課題イタリアにおける外国人労働者政策の現状と課題ー労働者の統合を中心に
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 法学部 | 教授 | 大木 正俊 |
- 研究成果概要
- イタリアにおける外国人労働者の取扱いについて、基礎的な文献の分析をおこなった。2024年9月よりイタリアでの研究活動を予定していたが、事情により本年度のイタリアでの研究活動はほとんどおこなえなかったため、資料や分析には限りがある。イタリアでは、正規に滞在する外国人労働者に対しては、EU法および国際条約の原則に基づき、イタリア人労働者と実質的に同等の労働条件と権利を保障している。たとえば、労働条件については、就労許可を得た外国人労働者は、イタリア人と同様に全国労働協約(CCNL)に基づく労働契約を結ぶことが原則である。これにより、幅広い労働条件について、国籍に基づく差別は存在しないことになる。また、社会保障制度(年金、医療、失業手当など)への加入も原則として義務付けられており、拠出と受給の両面でイタリア人労働者と平等な権利が保障される。もっとも、実務上は、外国人労働者がイタリア人とは異なる取り扱いを受けているケースが多く、また、就労許可を得ていない非正規の就労者も多く、彼らについても低廉な労働条件が問題視されている。以上を前提とすると以下のような論点が浮かび上がってくる。すなわち、(1)形式的平等と実質的平等のギャップ、(2)滞在許可やビザによる労働市場へのアクセスコントロールと労働者の低い交渉力の関係、(3)労働組合へのアクセスや団体交渉制度への実質的な参加に対する言語・文化的障壁の存在可能性、(4)「統合」概念自体への批判的再考である。以上の論点に関する分析はまだ始まったばかりであり、今後も継続して研究を続ける必要がある。