表題番号:2024C-324 日付:2025/04/04
研究課題約款による約款による契約の構造
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 助手 尹 美香
研究成果概要

本研究は約款を用いる契約の構造を明確にすることを目的とする。約款を用いる契約に対しては常に、契約内容形成への相手方の意思の介入の希薄さという問題が指摘されている。このような約款を用いる契約の構造を探るためには、まずそれを理解することが必要である。本研究においては、その手段として約款規制の分析から手掛かりを得ることを試みた。約款を用いる契約とそうでない契約の大きな違いの一つが、それぞれの契約に含まれる条項の形成、組入れに対する相手方の意思の介入の可否であり、それを最も明確に表しているのが、約款規制であるためである。分析は韓国、フランス法との比較を通じて行った。日本においては約款規制の対象となる条項は、主に1)不意打ち条項、2)不当条項と考えられている。しかし、このことはより広く捉えることも可能である。韓国、フランスにおいては、①相手方が、それを認識することが可能であった条項(この場合、認識には予見可能性だけでなく、契約締結の過程において当該条項の表示などによって相手方がそれを認識することが可能であったかなども含まれる。)、②内容が不当に不利である条項が規制の対象であることがわかる。また、日本においては、1)には組入れからの排除、2)には無効といった効果を対応させることが主張されてきたが、韓国、フランスにおいては、対抗不能、組入れからの排除、無効などの様々な効果が存在しており、政策、規制の目的に合わせ、各条項の規制の効果を定める傾向が見受けられる。本研究の成果は今年度中に論文として公開する予定である。また、約款を用いる契約がもつ、契約内容形成過程、契約締結過程における問題は、――その目的の達成のために契約を締結していることは確かであるが――国家の積極的な規制が可能であることも合わせて考えれば、相手方が社会で形成された契約を受け入れるだけの立場に置かれていることを表していると考えることも可能ではないだろうか。しかし、このような契約の存在の可否については契約の概念、国家、制度に対する根本的な検討が必要になると考える。