表題番号:2024C-303 日付:2025/09/18
研究課題マキァヴェッリの教会批判:書記官時代(1498-1512)の法案草稿・外交文書
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 助手 横尾 祐樹
研究成果概要
2024年度の前半は、2023年度から引き続き在外研究を実施した。その具体的な内容としては、フィレンツェ国立図書館(Biblioteca nazionale centrale di Firenze)を訪問し、マキァヴェッリに関連した史料収集を行った。例えばビオンド・フラヴィオBiondo Flavio執筆の歴史書である『ローマ没落以降の歴史』(通称、『十巻(Decades)』)にはマキァヴェッリ本人の書き込みが残されており、こうした史料も確認することで、帝政ローマ没落以降の歴史やキリスト教誕生以降の歴史に対して、1400年代の人文主義者やマキァヴェッリがどのような認識を抱いていたのかを割り出すことも可能となる。例えばカトリック教会が成立し、その勢力が拡大してゆく過程が重要な位置を占めている『フィレンツェ史』第一巻の典拠としても、ビオンド『十巻』は重要である。共和政ローマの卓越性に焦点を当てるのも重要だが、共和政ローマが没落した要因もまた、マキァヴェッリの思想を理解する上で重要だと考えられる。またマキァヴェッリ以外の人物でいえば、2023年に校訂版史料が初めて完成したドナート・ジャンノッティ『教会共和国について』もまた、ビオンド『十巻』や教会史、教皇の伝記を典拠にした作品である。こうした点も考慮すると、従来あまり焦点が当たらなかった知的資源(特に教皇や教会関連の史料)に目を向けることも、今後日本におけるマキァヴェッリ研究の課題として浮上してくると考えられる。2024年度の後半は日本に帰国し、上述の史料収集の結果を踏まえて、博士論文を執筆し、早稲田大学政治学研究科に提出した。既に審査は終了し、博士号を取得済みである。