ガラスや金属などの無機固体と高分子との接着面における，官能基スケールの相互作用とナノスケールの吸着高分子鎖構造が接着強さに紐づくかを階層的に解析し，高分子メルト接着剤やゴム状高分子の接着現象に界面吸着層が果たす役割について検討した。具体的には、非晶性高分子をシリコンおよびガラスなどの基板と接触させ、高分子のガラス転移温度以上に昇温させた状態で静置した際のナノスケールの吸着層形成挙動を調べ、高分子鎖の分子構造および巨視的な接着強さの時間変化と結び付けて解析した。非晶性高分子であるポリ酢酸ビニルの接着強さは吸着層の厚さと相関があり、時間依存性および温度依存性もよく一致した。また、ポリ酢酸ビニルと石英との界面におけるカルボニル基配向が変化する温度は、接着強さが増加する閾値となる温度とよく対応した。以上の結果から、吸着層形成を介して、接着体/被着体間の官能基スケールの相互作用と巨視的な接着強さとの関係を明らかにした。