表題番号:2024C-296
日付:2025/04/08
研究課題確率構造が未知の設定におけるRDP関数に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | データ科学センター | 教授 | 野村 亮 |
- 研究成果概要
- 本研究では、RDP関数を求める際の部分問題である自己乱数生成(SRNG)問題における最適レートの導出を中心に研究を行った。自己乱数生成問題とは、情報源自身を用いて効率的に情報源分布を近似する問題である。近似尺度として f ダイバージェンスを採用し、特に第二次最適レートの導出に成功した。第一の成果として、自己乱数生成問題における最適レートを情報スペクトル的な量で記述し、独立同一分布(i.i.d.)情報源に対しては第二次最適レートを解析的に求めることができた。関数 f の逆関数と標準正規分布の逆関数を用いた表現が得られ、変動距離や逆KL情報量など様々な f ダイバージェンスに対して具体的な結果を導出した。この自己乱数生成問題の研究成果をもとに、関連する二つの代表的問題についても考察を進めた。その派生として、Resolvability問題およびIntrinsic Randomness問題に対しても最適レートを導出した。特に従来研究では関数 f に対して単調減少性などの制約条件が課されていたが、これを緩和することに成功した。具体的には、単調減少でない関数 f に基づく f ダイバージェンスを考慮した場合においても、最適レートを情報スペクトル的な量で記述できることを示した。さらに、これらの成果をRate-Distortion-Perception(RDP)問題へ応用し、第二次RDP関数の下界を導出することにも成功した。これにより情報圧縮における符号化レート、歪み、知覚品質のトレードオフを精密に記述する理論的基盤が強化された。この結果は従来の結果と統合することで確率構造が未知の状況におけるRDP関数を導出する基礎となる。