表題番号:2024C-282 日付:2025/03/21
研究課題教育実践に資する数学教育哲学の構築とロジカルシンキング教育への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) グローバルエデュケーションセンター 教授 曽布川 拓也
(連携研究者) 岡山大学研究院教育学領域 教授 岡崎正和
(連携研究者) 岡山大学研究院教育学領域 教授 青木多寿子
(連携研究者) 岡山大学研究院教育学領域 准教授 宮崎宏志
研究成果概要
本研究においては、まず数学教育に関する哲学書として近年邦訳が出版されたA.Sfard「コミュニケーションとしての思考」(共立出版)を、その翻訳者である岡山大・岡崎正和教授とともに、より広く学校現場へ広める方法がないか検討した。同書はかなり根源まで立ち返って哲学を組み直す作業を行っているため、理解するのが容易ではない。掘り下げるのをある程度のところまでで切り上げ、途中までを公理化して議論を組み直すべきであるという結論に至った(口頭発表[4])。特に「考える」「わかる」といった概念について、本報告者の従来の考えとSfardの見方、さらには今井むつみ・秋田喜美「言語の本質」(中公新書)において提唱されている言語習得のモデルが極めて似ていることを発見して報告した(口頭発表[4][5][6])。

関連して、コミュニケーションのあり方について岡山大・宮崎宏志准教授とともに哲学的に検討し、論文[1]として発表した。また同氏との議論を通じ、デカルトに始まり、カントが確立したとされる近代の大陸系と呼ばれる倫理観、特に理性に対する見方について、これを現代の実社会にそのまま適用することは困難であると考え、新しい見方を付け加えることを提唱した(論文[2])。

さらにその検討の中で、1990年代以降アメリカで取り入れられ、2000年代以降に我が国でも導入されている「新しい人格教育」について、その意義が論文[2]の提唱に沿っていることを発見し、我が国におけるその第一人者とされる岡山大・青木多寿子教授と共に検討して報告した(論文[3])。