研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 秋山 和広 |
- 研究成果概要
高校生は、学業や進路、人間関係など、日常生活における多様なストレスに直面しており、自己嫌悪や自己否定に陥りやすい傾向が指摘されている。実際、心理的ストレスが過度に増加すると、情動的、認知的、行動的な変化を引き起こし、不登校や社会的孤立などの不適応行動の要因となることが知られている。このような背景から、学校教育において心理的ストレスへの予防的な取り組みを進めることの重要性が高まっている。
この点に関連し、認知行動療法の一つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(以下、ACT)は、医療分野や産業・労働分野、教育分野などで効果が報告されている。ACTは、心理的柔軟性を高めることで、社交不安の軽減や心理的ストレス反応の低減、生産性の向上に寄与するとされる。特に教育分野では、生徒のストレス管理能力の向上や主体性の育成に効果が期待されている。しかしながら、高校生を対象としたACTによる介入効果についてのエビデンスは限定的であり、学校教育現場での具体的な実践研究は十分に行われていないのが現状である。そのため、高校生を対象としたACTプログラムの実施とその効果検証が求められている。
本研究では、高校生を対象としたACT心理教育プログラムを授業内に導入し、その心理的ストレス反応への影響を評価することを目的とした。プログラムでは、ACTの基本概念を中心に据え、生徒がストレスに柔軟に対応できる能力を養うことを目指した。その結果、ACTプログラムは心理的ストレス反応の悪化を予防する効果があることが示唆された。また、授業内での実施が可能であることから、学校現場での応用可能性が高いことも明らかとなった。
本研究の成果は、高校生のストレス軽減を目的とした教育的介入としてACTの有効性を支持するものである。今後、プログラム内容のさらなる改良や長期的な効果の検証を通じて、教育現場におけるACTの実用性を一層高めることが期待される。