表題番号:2024C-263
日付:2025/03/27
研究課題山ノ神地名に関する基礎的調査とその教育的応用
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 森下 壽典 |
- 研究成果概要
本研究課題は、全国各地に点在する「山ノ神」地名をテーマとしたものである。とくに高等学院ワンダーフォーゲル部の部長という立場から、日頃、山行に赴くことの多い奥多摩および丹沢を中心に、登山地図に登場する山ノ神地名をピックアップし、その由来や現況について諸資料、および公開されている山行記を用いて調査した。
そもそも山ノ神は、山に座す多様な神格の総称であり、おなじ地名であるからと言って、その由来・背景に必ずしも共通性があるわけではない。今回、確認した事例でも、古代以前に遡るようなものというより、炭焼、鉱山開発等、近代あるいは近世になってからの産業との関わりが強いことが示唆される。
一方、南蛮人燭台の研究を通じて、登り窯と山ノ神地名が結びつく事例も確認できている。窯と山ノ神の結びつきについては、古代の須恵器生産に遡ると考えられる事例もあることから、古代との連続性についても引き続き留意すべきではあろう。
いずれにせよ、本年度の作業が極めて基礎的なものに留まったとはいえ、奥多摩・丹沢の山ノ神事例については、神が座す場としての維持・管理が次第に希薄化しつつあり、近年の登山ブームにおいても、等閑視されてきたといえる。これまでも研究対象としてきた神話・伝説に関わる「所縁の地」(たとえば、丹沢にはヤマトタケルの「踏み跡」が残るとされる磐座状の岩がある)を含め、山ノ神地名やその場をあらためて文化資源・地域資源として捉え直す余地があることが明らかとなった。
高等学院において総合的な探究の時間の枠組みとして位置づけられている「考古学と物質文化論・文化資源論」等での授業展開に活用しつつ、引き続き調査を続けていくことにしたい。