表題番号:2024C-252
日付:2025/04/02
研究課題漁業資源の持続可能な管理に向けた国際法の発展
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 | 准教授 | 瀬田 真 |
- 研究成果概要
漁業法について、特に、多数国間条約として漁業補助金、また、地域漁業管理機関(RFMOs)の枠組みについて、さらに両社の関係性について検討を加えた。漁業補助金については、経済連携協定の中でも規律され、例えば、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、IUU漁業への補助金に関して規律しており、IUU漁業を行っているかどうかの認定主体としてRFMOsを挙げている。しかしながら、2022年に世界貿易機関(WTO)の枠組みの下で採択された漁業補助金協定においては、RFMOsに加え沿岸国も、IUU漁業を行った船舶等を認定することを認めている。そのため、漁業補助金協定は、IUU漁業の規制に対して従来の枠組みを超えたアプローチをするものと評価できる。こうした特徴をもつ漁業補助金協定は、海洋法条約の権利義務に影響を与える可能性がある。また、実体的な権利義務に加え、紛争解決制度の文脈においても、漁業補助金協定は興味深い点を有する。同協定は、WTOの制度に基づき紛争が解決されることを想定している。WTOの制度は、これまで、国際法による紛争解決制度として評価されてきたものの、近年、上級委員会の機能不全により停滞している。他方で、海洋法条約に基づく紛争解決(主として裁判手続)制度は、WTO法上の紛争に対し直接的に管轄権を行使するわけではないが、近年、その適用法を広範に認める傾向にあることに鑑みれば、海洋法条約裁判所が、実質的には漁業補助金協定に関する紛争を扱う可能性があるかもしれず、この点についての検討を行った。