表題番号:2024C-249 日付:2024/11/10
研究課題「厄介な問題」に挑戦する対話の場と境界知作業者に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 教授 松岡 俊二
研究成果概要

本研究「厄介な問題」に挑戦する対話の場と境界知作業者に関する研究」は、気候変動問題と福島復興問題の2つの事例を対象とした。科学と政治と社会が協働した「対話の場」の形成による社会課題の解決のための知識創造が有効に機能する要因や条件を、境界知作業者に注目して考察した。具体的には、福島県浜通りで開催されている1F地域塾(1F廃炉の先を考える地域塾)と福島県中通りで行われている「こおりやま広域圏気候変動対策推進研究会(福島県郡山市とその周辺16市町村の環境政策担当者より構成)」を対象とし、「対話の場」の担い手(専門家、行政担当者、市民)へのインタビュー調査や対話の場の参加者へのアンケート調査から境界知作業者の能力や資質を分析した

社会全体の変革のためには、特定の境界知作業者が活躍するだけではなく、地域づくりに関わる多くの関係者が境界知作業のマインドを持つことが重要であり、そのための環境整備が必要である。本研究は、その1つのアプローチとして対話ツール(デザイン)にも着目し、関連の取り組みをレビューするとともに、具体のツール(デザイン)の分析を試みた。さらに、既存の「対話の場」および、対話を促進するためのツール(ステークホルダー・マッピング、サイエンス・カフェ、気候変動ミステリーなど)のレビューと調査を実施した。また、「対話の場」の担い手(専門家、行政担当者、市民)へのインタビュー調査とアンケート調査を行った。

以上の調査研究から、境界知作業者の能力や資質として、従来言われてきたエンパシー能力だけでなく、シンパシー能力も重要であるとの示唆が得られた。今後は、境界知作業者におけるエンパシー能力とシンパシー能力との相互関係について考察を行う。