表題番号:2024C-247 日付:2025/04/08
研究課題国際連盟の遺産と国際連合の創設
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 教授 篠原 初枝
研究成果概要
国際連盟から国際連合への設立過程については、これまで1944年以降の動き、特に英米の外交や
アメリカ国務省、そしてアメリカ国内の国連創設活動に焦点があてられていた。

本研究では、1939年、第二次世界大戦後の国際連盟の動きに着目するが、2025年2月に行ったイギリス公文書館(The National Aruchives)で の資料収集では下記のことが明らかになった。
第1には、第二次世界大戦がヨーロッパで勃発したのちも、ヨーロッパ内では連盟を維持しようとする動きが強く、できるかぎり、戦争に直接かかわらない国で理事会等の活動を継続しようとしたことである。
第2には、第2代連盟事務総長がアヴノールが退任以後は、ノルウェー出身のハンブロが実際の事務総長として活躍しており、時にはアメリカを法もうするなどして、連盟の活動に支援を求めている。
第3には、イギリス外務省内で、連盟についての議論が継続していたことである。アメリカでの国連創設についての議論は集団安全保障などの大きな枠組みを中心とするものが多かったが、イギリス外務省内では、これまでの国際連盟で行われていた実務的活動、保健衛生、社会経済問題を戦後の国際連合にどのように継承させるかという議論がなされていた。また、連盟で雇用されていた事務局スタッフを継続して雇用した方が、国際連合初期の実務推進には役に立つと想定されていた。
第4には、イギリスでは, 1944年に"The Failure of the League of Nations" という文書が民間グループによって作成され、これがイギリス外務省内でも広く読まれていたことである。これまで、「連盟の失敗」ということは、これまで戦後の研究者によってよく用いられていたが、第2次世界大戦中から、政策当事者のなかでもこのような意識が持たれていたことは実に興味深い。この点は、今まで、どの歴史家も唱えていなかったことなので、興味深い資料を探し得たのではないかと思っている。

以上明らかになった点を、資料をさらに精査する共に、アメリカとの関係も分析し、2025年度には一つの論文としてまとめたいと考えている。