研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 金 群 |
- 研究成果概要
ヘルスデータ分析による健康リスク評価と予測において、ビッグデータ分析手法により相関関係を明らかにするだけでは十分でない。データにおける潜在的な因果関係を推論し発見する探索的因果分析は有効であると期待されている。しかし、ヘルスデータは多くの要因が複雑に絡み合い、健康に関わる重要な特徴を適切に選択し適用することが容易でないなど多くの課題が残されている。本研究では、人工知能、機械学習、データサイエンス、統計学など分野を横断する学融合的な総合知を創出するConvergent Researchアプローチを用いて、因果探索による新たなヘルスデータアナリティクスの構築を目指して、基盤モデルとアルゴリズムを開発し、有用性と有効性を実験的に検証する。
今年度の主な研究成果は以下の通りである。
(1) 潜在的な健康リスク要因を特定することは、ヘルスデータ分析における重要な課題である。ニューラルネットワークに基づく多くの分析プロセスは説明可能ではない。分析プロセスを可視化する先行研究があるが、専門家によるドメイン知識が必要となる。本研究では、ドメイン知識に依存せず潜在的健康リスク要因を推定する探索的かつ解釈可能なアプローチを提案し、機械学習による重要な特徴を選択したうえ、因果探索によりリスク要因を発見し、ドメインモデルを構築する。さらに、2つのデータセットを用いて4つのベースラインと比較する評価実験を行った結果、提案するアプローチの有効性を検証している[1]。
(2) 多くの特徴選択の手法があるが、本研究では、重み付け総合スコア(WTS)指数を導入し定義し、最適化方策による新たなヘルスデータ因果分析のための複数特徴選択手法を提案し、2つのデータセットを用いて従来の手法より優位な評価結果を得た[2]。さらに、提案手法をウェアラブルデバイスと被験者自己申告から得られたヘルスデータにおける因果関係発見によるライフスタイルと行動の分析に適用し、有用性を確認した[3]
(3) 人間を理解し健康維持・増進やウェルビーイング追究を支える諸課題と挑戦について検討し、Convergent Researchによる学融合的な総合知を用いながら、とりわけ、因果探索によるヘルスデータアナリティクスとAIやIoT、ビッグデータなど新興技術との融合による新たな可能性と今後の展開について提示している[4-9]。